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Tuesday, June 1, 2021

杉山愛さん「良くないこと重なった」 大坂なおみ全仏オープン棄権に見解 - 時事通信ニュース

2021年06月01日19時59分

テニスの全仏オープン女子シングルス1回戦の第1セット、サーブを放つ大坂なおみ=5月30日、パリ

テニスの全仏オープン女子シングルス1回戦の第1セット、サーブを放つ大坂なおみ=5月30日、パリ

 女子テニスの大坂なおみ選手(日清食品)が全仏オープンを棄権したことについて、元トッププロの杉山愛さんにきっかけとなった記者会見の拒否などについて、自身の経験も踏まえて見解を語ってもらった。

<大坂なおみ 関連情報ページ>


 ◇一番望んでいない形

 ―棄権をどう受け止めたか。

 これが一番望んでいない形だったので、個人的にもショックだし、「今回は記者会見をしません」という発信をSNSでして、結論から言うと、彼女の望んでいない方向にいろいろなことが行ってしまった。大会にとっても良くない、他の選手にとっても良くない、自分の精神状態にも良くないということが重なってしまって、何のプラスもない、棄権するということになってしまったと思う。全体的には、本当に残念だし、彼女がいつ戻ってこられるのかというところ。

 ―会見を拒否したいという気持ちは、理解できる部分もあるか。

 もちろん、負けて会見場に向かうのは選手にとってやはり誰もハッピーな状態ではない。勝って会見場に行くのとはわけが違う。負けた後、ふがいない試合をしてしまった後は、その場からすぐにでも帰りたいというか、誰とも話したくない、誰とも接したくないというのが本音でもある。試合内容にも、誰と試合をしたかにもよるが、大半の選手が敗戦の受け止めは難しいと思う。
 ただそれも含め、選手にとって、会見、メディア対応というものは、やらなくてはいけない大きな一つの義務にはなっている。私個人の意見だが、そこはある意味で割り切るというか。受け止め方や答え方は個人差がすごくあるところ。なおみみたいに、本当に負担に感じてしまう人もいるかと思えば、うまく流せたり、うまくかわせたり、自分の言いたいことしか言わないというスタンスで受けることができたりする人もいる。個人差がある。なおみがそんなにストレスを感じているというのを、私も何回も彼女と接している中でも「それほどまでか」と今回、分からなかった。
 彼女が今回一石を投じたので、何がベストなのかは私にも分からないが、今後の方針である意味変化は必要なのかなと思った。彼女の発信によって、大会や四大大会側が、彼女を失格、出場停止にするかもしれないという反応はびっくりしたし、ああいう強い対立のような形にならなければよかったのではないかと思う。

 ◇思った通り伝わらないことも

 ―自身も辛辣な質問を受けた経験は。

 もちろん面白くない質問は中にはある。ただ、メディアの方たちとの付き合い方はとても大事とすごく意識していた。信頼関係、人と人とのつながりの中でやっていくので、普段から真摯にお付き合いしていれば、そうそう嫌なことは聞かれないと思う。英語だとストレートな言い回しになったり、日本語の方が繊細な聞き方だったりということもあると思う。
 私自身は質問からダメージを受けたという経験はあまりないが、自分が思った通りに伝わらなかったことによってショックを受けたことはある。「こういうことを言っているんじゃないけど、そういう風に伝わっちゃった」と。誘導的な質問や、使いたいところだけを使われてしまうというか、メディア側に都合のいいように伝わってしまったこともある。言ったことを丸々使ってもらえる尺や時間、文字数がないこともあるが、書き手や作り手の主観になってしまうケースもある。

 ―今回の件が、選手、メディアにとって、どう生かされるといいか。

 私が引退したのが12年前。そのときとメディアの関わり方や、SNSの発信の仕方は全然違う。メディアが大事というのはぶれずに変わらないと思う。選手が主導権を握りながら、ジャーナリストも聞きたいことを聞くのはそれでいいが、全てに対して真摯に答えるというより、答えたいことに答えるとか、選手もすごい精神状態の中、そこに出席することだけでも、認められるではないが、例え「これは答えられません」と言ってもそれが当たり前のようになるなど、良い文化になっていったらいい。
 みんな答えようとするし、人によっては冗談でかわせたり、うまくウィットに富んだ質問で質問返ししたりとか、選手によって工夫している。ただ、それができない選手も中にはいる。やっぱり話のプロではないので、そこは選手が自由にできるような雰囲気がつくられるとか、大改革は必要ないので、ケース・バイ・ケースで対応していくのがいいのではないかと思う。

 ◇追い込まれている

 ―会見を受けるのはファンのためでもある。

 そして選手のためでもあり、だからこそステータスもある。それは彼女も分かっていると思う。いいときだけ(話す)というのもプロとしてどうなのかということも、賛否の中ではあると思う。

 ―大坂はコートを離れるとSNSでつづっているが、東京五輪についてどう考えるか。

 やはりグランドスラム(四大大会)はテニス選手にとって本当に大きな意味を持つ大会なので、それを2回戦で棄権する精神状態は相当追い込まれていると思う。(復帰が)いつなのかは予想できない。早く彼女の精神状態が戻ってほしい。

 ―2018年の全米オープンのころから精神面が不安定だったそう。

 あれだけダイナミックなテニスをして、大きな舞台になればなるほど力を発揮できるタイプ。テニス選手として本当にすごいなと思う。それとは裏腹に、ナイーブで繊細で、本当に細やかな性格。内向的と彼女自身も言っているが、実際にそう。グラスに水がたまり、あふれてこぼれたのではないか。オンコートとオフコートのギャップが大きい選手なので、本当に立ち直ってほしい。(時事ドットコム編集部)

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