ボクシングの3団体統一世界バンタム級王者、井上尚弥(29、大橋)が10日、最も権威があるとされる米専門誌「リング」が発表する全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド」で1位に選出された。7日にノニト・ドネア(フィリピン)を2回TKOで下した一戦が高く評価され、階級の垣根を越えて世界最高ボクサーの栄誉を手にした。
井上は1位選出を受けて「一つひとつ積み上げてきた事がこうして評価されたことはボクサーとして光栄です」とコメントを出した。リング誌もツイッターで「歴史を作る井上尚弥が新しいパウンド・フォー・パウンドキングに」と1位選出を発信した。
パウンド・フォー・パウンド(PFP)は、階級の差がなかったものと仮定した場合に誰が一番優れたボクサーなのかを比較検討する考え方。欧米の専門メディアがそれぞれ独自に発表しているが、1922年創刊で100年を超える歴史があるリング誌が発表するランキングは、ファンや関係者の間でも広く価値を認められている。
リング誌は試合結果や内容、対戦相手の質などを比較材料に、各国のジャーナリストで構成する選考委員会でランキングを作成。米国在住のジャーナリストで同誌の選考委員を務める杉浦大介さんによると、選考は数日かけた話し合いの結果、前週まで1位だったヘビー級3団体統一王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)を推した委員が4人、前週3位だった井上を推す��委員が5人となり、井上の1位が決まったという。
PFPは1940年代から50年代にかけて中量級で活躍し、「拳聖」と称されたシュガー・レイ・ロビンソン(米国)をたたえる造語として作られた言葉だとされる。リング誌は1989年からPFPのトップ10ランキングを発表しており、これまでヘビー級統一王者のマイク・タイソン(米国)、メキシコの英雄フリオ・セサール・チャベス、キャリア無敗の5階級制覇フロイド・メイウェザー(米国)、史上2人しかいない6階級制覇のマニー・パッキャオ(フィリピン)などがPFP1位に選ばれてきた。
本場米国では中量級から重量級の人気が高く、長らく軽量級の選手にスポットライトが当たることは少なかった。しかし、最近ではミニマム級からスーパーフライ級まで4階級を制したローマン・ゴンサレス(ニカラグア)がリング誌でPFP1位に選出されるなど、軽量級やアジアの選手も関心を集めている。ユーチューブや動画配信サービスで世界中の試合映像が見られるようになり、SNS(交流サイト)でも情報が簡単に集められるようになったことが大きい。
世界ボクシング協会(WBA)、国際ボクシング連盟(IBF)、世界ボクシング評議会(WBC)のバンタム級王座を持つ井上はプロ戦績23戦全勝(20KO)。4団体統一を目指して、年内にも世界ボクシング機構(WBO)王者ポール・バトラー(英国)との対戦を希望している。
(山口大介)
井上尚弥、全階級最強ランキングで1位選出 米リング誌(写真=共同) - 日本経済新聞
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