阪神がついに貯金を手に入れた。首位を独走するヤクルトからしても、嫌な相手だと感じていると思う。阪神がさらに圧をかけるには、より嫌な打線になる必要がある。そのために1番中野の存在がカギを握る。

初回は先頭で右前打を放ち、3連打も絡んで3点を先制した。1番中野、2番島田、3番近本が出塁して4番佐藤輝、5番大山でかえすパターンが確立できている。

だが2回1死二塁で中野が3ボールから強振した。得点圏で甘い直球が来て、打ちに行く姿勢はいい。しかし、反り返るほどのフルスイングで仕留め損なってファウルにした。171センチと小柄だが、意外に小力があり、強いスイングが目立つ。それ自体はいいが、まるで2ケタ本塁打を放っている4番打者のような強振は、中野の役割としては違う。

打率2割8分7厘はいいが、出塁率3割4厘は物足りない。9四球は少なすぎる。1番としての役割、自分のタイプを認識していれば、得点圏であれほどの強振はせずに、コンパクトに強くスイングするだろう。

昨季まで近本が1番に座っていた時も同様に出塁率の低さを指摘してきた。だが今季は成長を感じる。現在は3番に落ち着き、打ちに行く打席と、7回2死二、三塁で四球を選んだ打席のように、切り替えができる。中野よりもパンチ力があるが、1発への意識はなく、鋭く強い打球を徹底的に打とうとしていることが、まだ1本塁打しかしていないことに表れている。

打てる打てないは、仕方がない部分はある。だが意識の積み重ねは大事だ。1年間を通すと、この日は単なる1打席に過ぎないが、終盤になると、その積み重ねが大きなものになる。今の中野はチームを勢いづかせる打撃もするが、勢いを止める打撃もする。安定感が出てくれば、ヤクルトを猛追できる打線になる。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ヤクルト 2回裏阪神1死二塁、中野(右)は左飛に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 2回裏阪神1死二塁、中野(右)は左飛に倒れる(撮影・上田博志)